2009年01月08日

カラマーゾフの兄弟

赤坂ACTシアターで、雪組公演「カラマーゾフの兄弟」を見てきました。
さばきを買う予定だったのだが、出てなかったので当日立ち見席を購入。
立ち見は嫌いじゃないけど…そうとわかっていればスニーカーで行けばよかった。
観てる間はブーツは脱いで立っていました。ええ。

カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキーの同名小説が原作。
19世紀、帝政末期のロシア。成り上がり者と言われるカラマーゾフ家。
一代で財を成した放蕩者の父親、情熱的でやや粗暴な軍人の長男、
理知的で理想家・無神論者の次男、善良な僧侶見習いの三男。
様々な人間の思想・愛憎が絡まるドラマ。

とりあえず、大阪の初日の様子を。
ミズさん(水夏希)が挨拶下手だなぁとかはおいといて。


まず、ヒロイン・グルーシェニカのとなみさん(白羽ゆり)、すごい。
華やか!あでやか!素晴らしい歌唱力!
すごい存在感だった。
綺麗で上手い人だとは知っていたけれど、淫売をやってこんなにハマると思っていなかった。

そして次男・イワンを演じる二番手のゆみこさん(彩吹真央)もすごい。
いやー、歌が上手いって、やっぱりすごい。
セリフの内容、キャラクターからいって、もともと非常に得な役なのだろうが、
説得力のある歌声で彼の思想や愛を歌われると、強く心に響く。
今作品では長男・ドミートリー(ミーチャ)が主役に据えられているが、
イワンの方がよっぽどインパクトのある人物に見えたのはそのせいだろうか。
…大審問官の曲が愉快なマーチで良いのかどうかはともかく。

クライマックスシーンは迫力があった。
父親殺しの無実を証明しようとするミーチャの、裁判シーンだ。
この裁判を、一場面でやるという荒技(原作は未読だが、これは荒技だろう)。
グレゴリーの証言、ミーチャの弁明、スメルジャコフの告白、イワンの絶望、
カテリーナの裏切り、そしてミーチャが認めた「罪」。
このくらいの数のエピソードを一場面に、つーか一曲に詰めた?怒濤のクライマックス。
あまりにも詰め込まれているので驚いたが、これが迫力だった。
「これがカラマーゾフの喜劇だ!」というミーチャのセリフで締めくくられる裁判シーンは、圧巻。
…いっそここで幕を下ろしてしまえばいいのにと思うくらいに。
そのあとのエピローグが冗長に見えたからなー。

興味深いキャラクターは、やはりイワンだ。
神の存在を否定し、帝国の不平等に怒り、神をも裁く「大審問官」として貴族への復讐をする、
クールなリアリストであり、かつ理想家のイワン。
理屈屋が理想家だと怖いな、と感じた。
立派に理論立った自分の思想と行動を、イワンは疑わない。
イワンはずっと共存している「幻覚」は、彼の思想を肯定し誘う。
しかし裁判のシーンで、それまで優しかった「幻覚」は彼を嘲笑する。
「これが君が救いたがった人民の姿だよ!」
「これは君が望んだ悲劇じゃないか!」
自分自身の影に打ちのめされたイワンは、もう立ち直れない。
精緻な理論にのっとった人間の盲目的な頑なさと、その脆さが、怖かった。

彼の「幻覚」は、顔色の悪い蛇みたいだ。
作中、ミーチャや父親は「毒蛇」と言われ、イワンはそんな彼らを軽蔑しているが、
イワンもカラマーゾフの毒蛇を飼っていたのかもしれない。
posted by バンビ at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 宝塚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/112298607

この記事へのトラックバック